2014年のグローバル・マクロ投資環境 JPモルガンAM 記者ブリーフィング

概 況


先進国の金融政策が支援するリスクテイク投資とアベノミクスの果実

榊原可人氏

榊原可人氏

JPモルガン・アセット・マネジメント
RDP運用本部 投資調査部 エコノミスト 榊原可人氏

2014年の投資戦略

世界経済は改善が続く

引き続き量的緩和縮小の動きに注意を払う展開が続くだろう。一方で、投資家のリスクテイクをサポートするような各種政策も打ち出されることが予想され、米国を中心とした景気改善は今後も続くとみる。

その際、バリュエーション面からではなく、企業収益の向上に伴って株価も上昇する、といった流れがイメージされる。足元では、世界経済をけん引する米国の設備投資が今後、拡大する見通しを示している(図1)。そしてFRB(米連邦準備制度理事会)は失業率のさらなる低下を促し、これが株式投資を支えることが期待される(図2)。

調整を経て再び上昇へ

図1

図1

先進国の株式を中心に強気イメージでスタートした2014年。JPモルガン証券が昨年12月初旬時点で描いた市場リターンの見通しによると、TOPIXは13年に45.6%上昇したものの、14年にもさらに45%の上昇を見込んでいる。

しかしながら年初から荒っぽい展開が続いている。市場は昨年末より強気の度合を高めていただけに、意外ともいえる動きだ。とはいえ「強気一辺倒」には往々にして無理が生じやすく、この先は期待が先走った状態をいったん調整した後に、あらためて上昇エネルギーが蓄積することを期待したい。

「金融政策」が金融市場にもたらす影響

図2

図2

金融政策はこれまでインフレ抑制を通じて債権者に好意的な運営がなされてきたが、今後は徐々に債務者寄りの運営がなされていくだろう。なぜなら、政府が最大の債務者であり、緩和策で膨らんだ債務のためにも、名目成長を押し上げるような政策を追求せざるを得ない状態に。借り手に有利な環境、つまり、低金利のまま景気とインフレ率を押し上げるような政策が選好された結果、設備投資の拡大と労働市場のタイト化が生じて、リスク資産にポジティブな環境が広がるだろう。

金融「規制」がリスクとなる可能性も

一方で金融機関がポジションをとらず在庫も持たない、といった状況が発生している。資本コストの上昇を受けて、ディーラーが証券の在庫保有を著しく制限するなどして、債券のトレーディング在庫が大きく減少していることが確認されている(図3)。量的緩和縮小が開始されて金利上昇下でレポ取引等が巻き戻される際の、市場の「吸収力」が懸念される。

図3

図3

国債の金利が大きく低下する中、利回りを追求する投資家がモ-ゲージREITやCLОなどに流入。これら商品の残高拡大が続いている。しかしながら、このような「量的緩和の副作用」は、市場の吸収力が縮小した現在の環境下において新たなリスクとなる可能性も。

地域別

米国:緩和縮小開始、市場安定がカギに

1月からいよいよ米国が緩和縮小に着手した。しかしながら「金融引き締め」にはまだ至っていないこと、そして、今後は「正常化」がポイントになることに留意したい。中央銀行のバランスシート拡大と、マネー量の拡大とは、厳密には同意ではない。中央銀行が「金融市場を支える」とコミットすることに対する投資家の信頼こそが「緩和マネーの正体」であり、これが縮小してもなお市場が安定するか否かが緩和縮小のポイントに。

加えて2014年は増税や歳出削減など「財政引き締め」の縮小が、GDP(国内総生産)成長率を1ポイントほど押し上げるとみる。

新興国:ブーム一巡し「格差」拡大

中国の成長が落ち着くなどブームは一巡したが、「危機頻発」といった状況でもない。コモディティ価格の長期上昇トレンドも終了したとみられる。債務国とそうでない国との間で鉱工業生産指数など各種動向に格差が生じるなど二極化の傾向が強まっている上に、債務国の債券利回りはさらに上昇傾向にある。インドネシアやブラジルでは大統領選を控えるなど主要国では選挙を予定するが、経済情勢が好調ではない状況下ではリスク要因にもなりやすい。

日本:引き続き回復基調が続く

とりわけ日経平均は先物主導の荒い展開が続いている。指数の特性による「ゆがみ」が露呈したかっこうだが、このような変動性の大きい環境は長期保有の投資家には向かない。是正が必要だが、日本はまさに過渡期にある。デフレ脱却への期待感は高まりつつあるが、消費増税後など懸念材料も多い。足元では駆け込み需要が生じているようで、4月以降の経済にはそれなりの影響が出ることが想定される。

しかしながら、今後もアベノミクス第1の矢「金融政策」、第2の矢「財政出動」はある程度、日本の持続好転に寄与するとみる。日銀は2月18日の会合で、近く期限が到来する貸出支援策の継続と規模拡大を発表。即座に日経平均が急騰するなど、市場の期待の高さも確認された。

国内活動主導で体力蓄積

雇用の割合が最大の中小企業非製造業では、不足感が既に07年のピークを上回る水準にまで拡大している。そもそも、今回の景気回復は国内活動によるものであり、輸出主導型の通常パターンとは異なる。製造業の生産・稼働率は2007-08年のピークから15%近く下回った水準にあるにもかかわらず、企業の収益率は過去最高水準に。消費増税の下、やはり賃金の動向がポイントになる。

円安持続の可能性とその影響

金融危機モード後退による安全資産としての円の需要が減少。あるいは、経常黒字の縮小などから、円安傾向は継続するとみる。しかし、工場の海外移転など貿易構造が大きく変化したため、以前ほどには円安メリットを輸出業が受けることはない、との見方もある。確かに、昨年は円安が進んだにもかかわらず輸出量がプラスに転じなかったのだが、これは、海外景気の低調を素直に反映した結果だ。

そもそも一国の輸出と輸入は連動する面があり、景気が改善して輸出も輸入も増大する「貿易総額」の増加こそが企業の利益につながると考えられる。この先も世界のマクロ環境が総じて堅調に推移するならば、円安が貿易総額を増大させて輸出関連企業の収益に大きく貢献するだろう。

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