フィデリティ2014年見通し グローバルCIOが語る、世界市場の展望と注目点

概 況


フィデリティは1月30日、グローバルな資産運用会社フィデリティ・ワールドワイド・インベストメントのCIO(最高投資責任者)の来日を機に、報道関係者向け報告会を開催。「2014年の見通し」をテーマに、各アセットの現状や投資機会などについて語られた。

2014年債券市場の見通し/分散投資・銘柄選別が肝要

アンドリュー・ウェルズ氏フィデリティ・ワールドワイド・インベストメント
グローバル債券最高投資責任者
アンドリュー・ウェルズ氏

米国見通し:景気回復も低金利は継続

市場コンセンサスは景気回復の継続を予想している。とりわけ米国に関しては一貫した回復が予想されており、GDP(国内総生産)成長率は2014年度が2.6%、15年度はこれを上回る3%超が期待されている。一方でインフレ率は低水準の継続が見込まれており、これは景気回復にとっては良い兆候ではあるが、金利上昇が限定的であることをも示している。市場は金利のノーマライゼーションを期待しているようだが、個人的には、4%といったかつての水準に戻ることはないと考える。

欧州見通し:構造的問題払しょくできず

一方で欧州のGDP成長率は13年の-0.4%から、14年には1%とプラスに転じるものの、15年は1.4%と停滞が想定されている。低成長により各国政府の総債務残高は拡大が続いており、今後は資金調達コストの上昇が見込まれるなど、依然として構造的な問題が存在している。

失業率も上昇が続いている。これが下がらない限り、中央銀行は利上げができず、欧州でも低金利が続くだろう。加えて資産買い取りプログラムなどの量的緩和も継続されるとみる。

グレートローテーションは起こらない

国債中心にポートフォリオを組むファンドなどからは資金流出があるかもしれないが、引き続きインカム志向の投資家からは債券への資金流入が続いている。中でも社債が継続的に買われており、足元では年金基金が積立不足を解消しようと一気に株を売却し、その資金を債券に振り向ける動きがあったようだ。

先述したとおり、14年、15年と経済の停滞が見込まれる欧州だが、社債の中からボトムアップで良い銘柄を選べば、応分のキャリー(保有期間利回り)を期待できそうだ。また、高利回りを追求する投資家にはハイイールド債が有望なオプションだ。デフォルト率はハイイールド債全体で低い状態にあり、当面上昇する可能性も低い。

「社債」選別投資に妙味あり

投資適格社債にはなお妙味があると考える。グローバルBBB格付け債券のターゲットバリュースプレッドが180ベーシスポイントであるのに対し、フェアバリュースプレッドは109ベーシスポイントと、クレジット・スプレッドが過去平均を大幅に上回ることから、この先の縮小余地があると考える。

一方で、インフレの兆候が見られないにもかかわらず、投資家の一部がインフレリンク債への投資を始めている。テールリスクの発生を見据えて、債券が割安なうちに仕込んでいるようだ。今後は各国の緩和策が縮小されるなど、テクニカルな状況がいったん変われば、債券の状況も急速に変化することが想定される。

2014年グローバル株式市場の見通し/引き続き米国の景気回復がけん引

ドミニク・ロッシ氏フィデリティ・ワールドワイド・インベストメント
グローバル株式最高投資責任者
ドミニク・ロッシ氏

新興国:「新成長モデル」を模索中

1990―97年はIMF(国際通貨基金)主導の「ワシントン・コンセンサス」で成長を遂げた新興国。貿易や各種サービスを自由化する代わりに、西欧諸国から資金提供を受けて近代化を進めたが、アジア通貨危機でこのモデルは破たん。このときの教訓から新興国は「二度と西欧諸国の資金に依存しない」ことを学んだ。以降、自前で米ドル外貨準備高を積み上げたり、債券市場を育成して資金調達環境を整備するなど「金融の自給自足」と「輸出主導型モデル」に挑んだ結果、20億人以上が貧困から脱却するなど、非常にうまくいった。しかしこちらも先進国経済の停滞で終焉(しゅうえん)を迎えている。

新興国のボラティリティは今年も継続するだろう。先ごろIMFは成長率見通しの引き下げを行ったが、さらなる引き下げも予想されている。とはいえ、新興国の成長要因はまちまちで、選別が重要だろう。例えば、輸出依存からの脱却を図り、電気通信業界の規制を緩和して競争力を導入したメキシコなど、国内市場の改革に取り組んで成功した国はポジティブ。一方でロシアやブラジルなど寡占・独占企業が多く、改革に困難を伴う国は苦戦が続くだろう。

中国:膨大な債務残高が成長を阻害?

金利上昇が続いている。1カ月物上海銀行間取引金利(SHIBO)は1月末7%にまで上昇してきた。中国は近年、人為的にマイナス金利を継続してきたが、これを平準化しようとしている。一方で公的債務はGDP比200%超にまで拡大しており、金融引き締め局面に入った際には極めて大きな成長阻害要因になると考える。

米国:構造問題が改善、堅調な成長続く

懸念材料は見当たらない。3%成長が見込まれているが、前回の景気拡大局面とはその内容が大きく異なる点もポジティブ。前回は財政支出によるものだったが、今回は「民間主導」。連邦政府の公的支出が減少傾向にある一方で、実質輸出額は増加して構造的な回復を続けている。シェールガス革命によって米国のエネルギー輸入量は日量1200万バレルから800万バレルにまで減少して、製造業も回復。米国企業の競争力が増しており、住宅以外の民間設備投資やM&A(企業合併・買収)も活発化している。

一方で低金利が続いているが、これは、GDPの7割を占める個人消費の伸びが2%未満と低水準なことが要因だ。平均時間給の伸びは昨年11月時点で2.2%と、名目GDP成長率を下回っている。企業成長が続く一方、インフレが急速に進む可能性は低く、米国ではこのような実質マイナス金利の状態が今後数年間続くとみる。

日本株:投資環境の改善が待たれる

アベノミクス3本目の矢「民間投資を喚起する成長戦略」、中で、コーポレートガバナンスの改革が実現できるかどうかに注目している。英国を手本に株主の権利を強化する策などを議論しているようだが、金商法の改正などを通じてこれを実現できれば、日本株式市場の活性化に多大に寄与するだろう。日本企業の多くは過分のキャッシュを手元に置き、株主価値を毀損(きそん)している。これが投資に回れば、景気を大いに押し上げることが期待される。

新興国のボラティリティが先進国に与える影響

米国など先進国への影響は限定的と考える。グローバル経済の動向は、最終的には米国のファンダメンタルズ次第だからだ。

戻る