アーク東短オルタナティブ 厚年基金解散ラッシュ控え、PEファンド売却で出番 

概 況


セカンダリー業務で独走中

鈴木英典氏

鈴木英典氏

取締役 鈴木英典氏語る

PE(プライベート・エクイティ)ファンドの募集販売などを手掛けるアーク東短オルタナティブは、1月中旬の東短グループ入りを機に、積極的な業容拡大を目指している。今後、解散が相次ぐとみられる厚生年金基金の資産売却、現金化に対応した事業展開にも注目が集まるところ。現在の国内オルタナティブ(代替投資)事情なども交え、先にJPモルガン・アセット・マネジメントから転身した、鈴木英典取締役(写真)に話を聞いた。

――2010年10月の設立から、まだ3年余りの若い企業だが、現在の事業内容は。

「もともと国内の機関投資家に内外のPEファンドなどを仲介する『プレースメント・エージェント業務』(ファンド資金募集サービス)でスタートした。PEファンドやインフラ投資というと、国内では、流動性に欠けるイメージから敬遠されがちだが、海外においては活発に投資されている。これらを国内投資家につないで流動性をエンジョイしてもらうというものだ。続いて12年10月には、国内機関投資家が保有するPEファンド持ち分の海外売却先を仲介する『セカンダリー業務』(ファンド流動化サービス)に進出。昨年8月には適格投資家向け運用業登録を行い、翌9月、投資一任契約で資産運用を受託する『アセットマネジメント業務』(ゲート・キーパー・サービス)にも進出。低流動性資産に特化した3本柱の事業展開となっている」

――短期金融市場仲介大手である東京短資の持ち株会社、東短ホールディングスの傘下入りした理由は何か。

「おととし、AIJ投資顧問による年金消失問題が表面化して以降、独立系というだけで、十把ひとからげに『怪しい』と見られがちな風潮が生じた。信用補完のためには強力な後ろ盾が必要となり、複数の候補が浮かび上がったが、大手金融グループ内には、既に同種の系列企業が存在したり、そもそも中立性維持の観点からも問題があった。それらの点で、日銀や大手金融機関などに幅広く付き合いのある東短グループはベストなパートナーとの結論に至った」

――AIJ問題の余波から、昨秋にかけて年金改革が急速に進展。4月以降、厚生年金基金の多くで解散が相次ぐ見通しだが、こうした動きの中、セカンダリー業務の必要性が急速に高まっているとか。

「代行部分が赤字の基金には5年以内に解散を促すことになった。約650に及ぶ基金のほとんどは、現状のままでは存続できなくなるとみられている。そして厚生年金基金には、PEファンド、インフラ、不動産など低流動性資産の保有が少なくない。かといって、相続税のように不動産現物納付というわけにもいかず、代行返上の際には現金化が求められる。こうした資産を対象に、海外投資家に買い手を求めるのが当社のセカンダリー業務だ」

――厚生年金基金の解散などが決まるタイミングはいつか。

「年に2回(2、8月)の代議員会が大きな意思決定の場となる。この2月にも、解散を決める基金が少なからず出てくるだろう」

――厚生年金の代行返上だけではなく、企業年金分野でも、セカンダリー業務のビジネスチャンスが生じているそうだが。

「確定給付(DB)年金から確定拠出(DC)年金へのシフトの流れがそれだ。1月23日付日本経済新聞でも『4月以降、富士通やNTT、全日空など大企業に導入が広がる見通しで、本格的な普及期に入る』などと報じていた。DC年金へのシフトは、これから積み立てる『将来分』だけではなく、いずれは、既に積み立てられた『過去分』にも及ぶ可能性がある。やはり低流動性資産の流動化、現金化ニーズが生じることになる。この分野のスペシャリストはほかになく、当社には既に30―40件の引き合いが寄せられている」

――年金の保有する、PEファンドなどの低流動性資産は、全体でどのくらいの金額になっているのか。

「全体で見れば1兆1000億円程度か。このうち、厚生年金基金や確定給付企業年金などで、いずれ流動化しなければならない資産の額は、ざっと3000億―4000億円といったところだろう」

――同様の業務を手掛けるライバル企業はどこになるのか。

「例えば、当社のプレースメント・エージェント業務のように、海外のPEファンドなどを日本で販売する業者なら少なくないが、その逆は、ほとんどいない。少なくとも、12年に第二種金融商品取引業登録を受けた時点で、こうした業務を合法的に行うことができるのは、当社のみだった。他社が追随するにも相当な時間がかかるのではないか」

――国内に競合相手がいなくても、海外企業が参入してくることもあるのではないか。

「当社は、資産の売り手である国内年金の立場に立って、海外に買い手を探している。これに対し、海外企業は結局、『買いたい側の代理人』として出てくることになる」

――ハゲタカよろしく、足下を見て買いたたいてくる、ということか。

「本来なら20%程度のディスカウントで流通すべきところが、30%とか40%の値引きを持ちかけるといったこともあるかもしれない」

――低流動性資産の買い方は、今後も、もっぱら海外に求めるのか。

「日本の投資家の保有するPEファンドは、ネームバリューのあるものが多く、大方は海外でスムーズに消化できるとみているが、こうして順調に売却が進む(売買が成立する)ことが分かってくれば、従来、低流動性を懸念して投資してこなかった国内機関投資家層にも『新たな資産クラス』としての認識が広がってくる可能性がある。当初こそ、買い手は海外に求めざるを得ないが、いずれは金融機関や生損保などが買い手になる可能性があると考えている。前述の通り、『安く売らせよう』という考えはないが、それでも、基本的に売り手の事情で手放す以上、一定のディスカウント価格にはなるため、その点は買い手にとってのチャンスだ。また、セカンダリーで購入すれば、(資金の固定化される)満期までの期間を短縮することも可能だ」

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