REIT相場の現状と見通し 環境は追い風も投資家の利回り中心の意識が抑える 

概 況


東証REIT指数、コアは1400―1500ポイント台前半の展開

石澤卓志氏

石澤卓志氏

みずほ証券 チーフ不動産アナリスト 石澤卓志氏に聞く

安定した運用対象としてREIT(不動産投資信託)対する関心が高まっている。マーケットを取り巻く環境もよく、先高期待は根強いといわれる。J―REIT(日本版不動産投資信託)の仕組みを説明すると、投資家から集めた資金でファンド(投資法人)を設立して、その資金を不動産(オフィスビルやマンションなど)に投資し、不動産を運用(維持・管理、買い替えなど)し、不動産事業の利益(賃料収入-管理コスト)を投資家に分配(配当)する商品だ。REITマーケットの現状と今後の見通しなどについて、みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏に聞いた。

■REITマーケットの現状

現在のREITの価格を見ると、大幅に落ちるといった要因が見当たらない。一方で、REITは利回り中心の商品とあって価格が上がるのはそれほど歓迎しない投資家がいる。ここしばらくREITの価格は全般的に低迷が続いたが、価格が落ちると利回りが上がってくるため、利回りがある程度の水準まで上がった段階で即座に買いが入るといった状況にあって、結果的に、REITの平均配当利回りは、「長期金利(10年国債利回り)プラス300bp(ベーシスポイント)=3%」の水準を維持している。昨年のREIT価格の暴騰はアベノミクスに対して期待が先行したことの反動によるもので、今年は、昨年と比べると価格を押し上げる要因はあまり見当たらない。また、最近は、期待先行というより実績が求められているような状況であり、期待による価格上昇という展開は考えづらいといえる。REITは、利回り商品としての判断が働くことで、長期金利が安定していれば、投資家がREITを見る評価基準も変わらないとみており、REITの価格は落ち着いた水準になってくると考えている。

■REIT価格の3つの決定要因

REIT価格の決定要因はおそらく3つあると考えている。1つ目は実物不動産マーケットの動向、REITは不動産賃貸業が本業であり、収益源ということによる。2つ目は投資家の需給関係。3つ目は長期金利の動向だ。

■実物不動産マーケット

1つ目の実物不動産マーケットの状況を見たい。REITは、運用対象の半分はオフィスビルとあって、オフィスビル中心の動向をお話すると、東京23区のビル供給が少ない年に当たっている。おととし2012年は大量供給だったが、昨年がおととしの供給量の3分の1程度、今年はおととしの2分の1程度と供給が絞られている状況だ。一方で、需要は、アベノミクスや日本経済に対する期待があって、東京、あるいは日本の地位が相対的に上がっている。外資系金融機関の一部は人員の増強を始めている。供給が少なくなって需要が拡大してきたことで、オフィスビルのマーケットは、今年は好調と考えられる。東京23区の空室率は1年間で2%程度低下して、5%程度までなってくると予想している。空室率が5%まで下がると賃料が上がってくることで、REITの運用成績も今年は好調であると考えている。東京だけでなく、名古屋、大阪、広島、福岡など日本全体でもビルの供給量は少ない都市が多く、札幌を除くほとんどの都市でビルの市況は改善するとみている。REITの投資対象は東京が中心だが、不動産マーケット全体が良い雰囲気になってくるだろう。実物不動産マーケットの動向は、REIT相場にはプラスと判断される。

■投資家の需給関係

2つ目の投資家の需給関係はどうか。REITzの価格は、一昨年の12月下旬の政権交代が始まったころから、日銀が異次元緩和を公表した4月4日まで暴騰した。自民党が衆議院選挙前から国土強靭化計画を打ち出し、不動産に関与することを言っていたことでこれに対する期待でREITが上がった。この結果、昨年3月末はREITの価格は相当割高だった。そこで、期を越してから投資家が手持ちのポートフォリオを見直し、含み益が出ていたREITには利益確定の動きが強まった。これでREITの指数だけを見ると暴落したように見えるが、実態は、3月末が相当割高だった。4月、5月と低下したことで、むしろ価格はノーマルな状態に戻ったという状況だ。昨年9月8日にオリンピックの招致が決まって、翌営業日からREITの価格が再び上昇した。オリンピックから不動産の分野に相当恩恵があると考える人が多かったからで、9月末の今年度上半期をREITの価格は高い水準で終わったわけだが、それがために10月に入ると利益確定する向きが多かった。

昨年4月あるいは、10月の売却によってREIT投資で利益を上げた人がかなり多かったわけで、こうした成功体験が効いている。REITは発行済み株式数の半分は国内金融機関が保有しているが、国内金融機関は成功体験を下にREIT運用を増やす予定だ。また、今年はNISA(少額投資非課税制度)のスタートにより、ある程度は個人資金がREIT市場に入ってくる可能性がある。REITそのものより、REITを組み込んだ投資信託を購入される方がむしろ多いだろうが、いずれしてもREITに対する需要はこれで多少増えてくるとみている。さらに、まだ先の話となるが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)、公的年金の動向が注目される。昨年秋に政府の有識者会議の報告書が出され、リスク資産を含めた運用方針の見直しを迫られる状態となっており、運用方針が変更されると、おそらく今年秋になるとみられるが、公的年金の資金の一部がREIT市場に入ってくる可能性がある。このように国内金融機関が昨年の成功体験で投資を増やそうとなっていること、個人投資家の資金もNISAがらみでREIT市場に入ってくる、公的年金でも可能性としてREIT投資が始まるかもしれないことで、投資家の需給関係もREIT市場にとっては取りあえずプラスと考えられる。

■長期金利の動向

3つ目は長期金利の動向について。REITは投資家から集めた資金で不動産を購入して、運用するが、その際に約40―50%は借入金で調達、不動産を購入する。金利が上昇するとREITの金利負担が上がり、経営を圧迫する。REITは利回り中心の商品であるため、一般的な金利が上昇するとスプレッドが縮小してREIT投資のうまみが少なってしまう。従って金利の上昇はREITにとってマイナスだが、日銀の金融緩和の姿勢、さらに金融緩和を続ける方針を示している。金利自体はかなり低い水準にあり、中期的に上昇する可能性はあるが、日銀の金融緩和の姿勢が金利の上昇を抑えていくことになる。金利は緩やかな上昇になるとみられ、今後6カ月以内で0.5%以内の上昇になると予想されるが、このような状態となれば、現在、投資家がREITを見る際には、REITの平均配当利回りは「長期金利プラス300bp」が目安となっており、配当利回りが300bpを上回ると割安、300bpを下回ると割高と解釈されることが多いが、長期金利が変わらないとすれば、この基準が堅持されるとみている。金利動向は、REITの価格にとってニュートラル、もしくは若干プラスと考えられる。

■今後の市況展望

3つの要素を考えるとREITの価格が暴落するというシナリオは考えづらい。上昇する要因は多いが、投資家の利回り中心の意識が上昇を抑えよう。REITはあくまで利回り商品として投資家に認知されており、利回りを維持したい―長期金利プラス300bp(3%)を維持したいという心理が投資家に働く。REITマーケットは国内金融機関が約半分を持っていることで投資家の意向が比較的反映されやすいことで、投資家の利回りを確保したいという意識がREITの価格の上昇を抑えるだろうと考えられる。現在、REIT指数は1400ポイント台後半にあるが、1400ポイントは一応の下値と考えており、この水準を下回る可能性はかなり低い。上値もある程度抑えられてくるとみており、一時的に高くなる可能性がないとは言えないが、最終的には1500ポイント台前半に収まってくると予想している。今後6カ月間では東証REIT指数は1400ポイントから1500ポイント台前半との見方をしている。一部には1700ポイントまで上昇するとの予想もあり、一時的にはその水準まで上がる可能性はあるが、利回り中心の考え方から見ると1500ポイント台までに収まってくると考えている。

昨年以来REITのファイナンスがかなり増えている。昨年は増資が37件あったが今年に入って既に5件の増資がある。ファイナンス案件は本来REITの価格に対してマイナス要因となるが、REITの価格がある程度の水準を保っていることを踏まえると、強気とまでは言えないが、利回り中心の見方が生きているといえる。

足元はREITの価格は落ち着いているが、REITそのものの動きは結構活発だ。1月は新規上場と増資を合わせて5件のファイナンスがあったほか、投資法人債による資金調達が多くなってきている。REIT自体は活発だが、むしろREITの価格は安定しており、投資家はREITの運用成績あるいは増資によってきちんと増配のシナリオを作ることができるかというエクイティストーリーを冷静に見ながら判断している。投資家のREITに対する見方がきっちりとした、堅固なものになってきたことを反映しているとみている。

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